モボ・モガプロデュース最新作、稲垣吾郎主演『多重露光』が、10月6日(金)~10月22日(日)日本青年館ホールにて上演される。いまもっとも期待されている劇作家、横山拓也による書き下ろし、演出は、読売演劇大賞演出家賞を受賞の俊英・眞鍋卓嗣とタッグを組んだ本公演。
横山拓也の緻密な会話劇。ある街の古い写真館を舞台に稲垣をはじめ、真飛聖、相島一之ほか、個性ある実力派俳優陣が様々な人間模様を繰り広げる。
本作で、真飛演じる麗華の息子・実を演じるのは若手実力派俳優、杉田雷麟と小澤竜心(ダブルキャスト)。自身と年齢が近い役に戸惑いながらも共感する彼らに、本作への思いと意気込みを聞いた。
― まずは出演が決まったときのお気持ちと、脚本を読んだときの感想をお聞かせいただけますか?
小澤竜心(以下、小澤):共演の皆さんも素晴らしい方々ですし、まさかこんなに大きな作品に自分が呼んでいただけるとは思ってもいなかったので、とても緊張しました。自分にとって未知の世界なので、とにかく挑戦していく気持ちを持って、わからないことは教えていただき、また新しい自分を見つけながら、楽しんでいこうとワクワクした気持ちになりました。「多重露光」という物語を初めて読んだ時と、次に読んだ時では受け取るものや自分の感情が違っていたので、観客の皆さんもそれぞれ色んな感情が生まれるはず。色々な楽しみ方がある作品だと思います。
杉田雷麟(以下、杉田):僕は以前、横山(拓也)さんの脚本作品に出演させていただいたことがあるので、脚本は絶対に面白いに違いないと思っていました。なおかつ眞鍋(卓嗣)さんと横山さんがタッグを組む舞台なので、凄く安心して参加することができると思いました。
脚本はやはり横山さんらしく、生々しいというかリアルで面白くて、モヤモヤが残ってすっきりしない部分もありましたが、現実世界ってそういうものだなと思うし、そういうところも含めて、演じるのが楽しみになりました。
― “実”という役をどのように受け取って、演じていこうと考えましたか?
杉田:“実”は年齢の割には少し子供っぽいところがあるので、そこを少しだけ意識しました。どうして子供っぽいのか・・・というところまでしっかりと考えて、父親に対する思いや抱いてるものを大切にしながら、いま稽古を重ねています。
小澤:“実”は、僕自身と年齢が近いので、台本を読んで共感できる部分もたくさんありました。楽しそうにしていても、心の中でモヤモヤしているものがある。自分の中に抱えているものがあって、それがお父さんのことでもあるかもしれませんが、伝えたくても伝えられない環境、素直になれない自分がいたり、でも分かってほしいというような気持ちの葛藤もある。そこに至るまでの経緯を大切にして役と向き合っていきたいと考えています。
― 稽古は順調に進んでいますか? 稽古を重ねながら役を構築している最中かと思いますが。
小澤:色々考えながらやっています。本当に色々と・・・(笑)。稽古に入る前に自分が思っていた“実”の印象が違っているところがありました。雷麟さんや真飛さんの演技を見ながら、そういう見方もあるのか!という新しい発見が多くて。でも、自分の“実”を演じるのは自分なわけで。色々な角度から吸収しながら、自分の“実”を演じないといけないと考えているのですが、いま頭の中が渋滞中です(笑)。
杉田:ダブルキャストなので、相手(Wキャスト)の芝居を絶対に見るので。“俺はこれだ”と決めてしまうわけにもいかないですし、僕も竜心くんが演じているところを見て、気づかされることもあります。自分が自分のやり方で演じているときに、いきなり横からバーン!と(違う考えが)入ってくると、そこでまた考えてしまったり。でも、切磋琢磨しながら確実にいい方向には向かっていると思います。
― では、今回のダブルキャストはご自身にとってプラスになった?
杉田:そうですね、初めての経験ですが、お互いにいい緊張感を持って影響し合っています。
小澤:僕もそう思います。
― 最後に舞台立つときにはそれぞれ小澤さんの“実”、杉田さんの“実”を見ることができるわけですね。
杉田・小澤:はい。僕らもそれぞれどんな“実”になるのか楽しみです。
― 稽古場の雰囲気はいかがですか?
小澤:皆さんリラックスして、和気あいあいとしていますが、やっぱりいざ稽古始まると緊張感が凄いです。
杉田:その場の空気がガラッと変わりますね。
小澤:本当に変わるね。
杉田:休憩になったら、またガラッと変わるしね。いきなり和み始めて(笑)。
― 主演の稲垣さんや、母親役の真飛さんの印象をお聞かせいただいてもいいですか?
小澤:真飛さんは僕らのことを凄く気にかけてくださっています。ダブルキャストなので、時間がかかってしまうことを気にしていたら、「私もダブルキャストやったことがあるから分かるけれど、大変だと思うし全然付き合うから(自分が納得いくまで)やった方がいいよ」と言ってくださって。稲垣さんも「そんなの全然やるよ。時間は別に気にしなくていいから。絶対にやった方がいいから」と、とても助けていただいています。
杉田:「全然気を遣わなくていいから」と仰ってくださって本当に優しいんです。稲垣さんは周りの色々な方を気にかけてくださっています。お芝居以外のことでも気さくに話かけてくれて、常に心が和んでいます。吾郎さんがカメラの説明をしてくださるんですが、その時は本当に楽しそうに話されるので、僕たちも楽しくなります。
小澤:現場に新しいカメラが運び込まれて来るごとに稲垣さんの説明会が始まって、それを囲みながら楽しく聞いています。本当に詳しいし、聞いていて面白いです。
杉田:凄くカメラが好きなんだということが伝わってきます。あと、吾郎さんはセリフ量が凄く多いので空き時間にはいつも台本を読んでいらっしゃいます。
― お二人は休憩時間にどんなお話をされているんですか?
小澤:竹井(亮介)さんや相島(一之)さんと雑談したり・・・。
杉田:たわいもない話をしています。
小澤:おにぎりの具、何?とか
杉田:持ってきたパンの話とか・・・、そういう話で休憩時間が終わってます(笑)。
― ご自身の中に実を感じることは何かありますか?
小澤:僕は本当に(実を感じることが)多いです。細かいシーンになりますが、お母さんの麗華が、自分の息子を「実です」と紹介するときに「(わざわざ紹介しなくても)いいよ・・・」みたいな態度をとるのですが、僕もその通りで。「自分から自己紹介できるから!」と感じたり、お母さんにそろそろ子離れしてほしいなと思う気持ちが“実”にもあると思うんです。自分にもそういう瞬間があるので、麗華さんを自分の母と照らし合わせて演じる瞬間が多いです。
― 18歳~20歳は、母親とってはまだまだ子供だという感覚かもしれないけれど、本人はもう子供じゃないと思っていますよね。
小澤:そうなんです。もうそろそろ1人でいろいろやっていきたいと思っているんです。
杉田:母親の行動について、“実”が「すみません、母が」と詫びて、ちょっと大人ぶるところがあるんですが、そういうところは自分にもあったなと感じました。なので、演じていて自分のことを見られているみたいで、ちょっと恥ずかしいです(笑)。
小澤:台本を読んだときに、自分の家族の会話を見られていたんじゃないかと思うくらいでした。そこが横山さんの脚本の面白いところだと思います。
杉田:本当に細かいところがリアルだよね。
― 今回久しぶりの舞台になると思いますが、ご自分にとって“舞台”とはどんな存在ですか?
杉田:僕は“怖さ”を感じることがあります。同じこと(演目)を何度も繰り返して上演するわけですが、ほとんどのお客様はそれを初めて観てくださるので、やはり新鮮さが欠けてしまってはいけない。それがけっこう難しかったりもするんです。ただ、映像作品にはない、お客様の反応が直接その場で感じられることは、凄く面白いです。「ここで笑うの?」とか、自分も舞台にいながら一瞬素に戻りそうになったりして。怖くもあり楽しい場です。
小澤:常にもう1人の自分をその場に置いておかないといけない場所が舞台。素に戻る瞬間があってはいけないけれど、自分らしさを忘れてはいけない。特に今回はダブルキャストですし、お芝居として周りからどう見られているのかを自然に意識して臨まないといけないと思います。ダンスの舞台でも同じで、お客様にどう感じていただけるかを意識して踊っているので、芝居と通ずるものがあると思います。もう一人の自分を大切にしていきたいです。
― タイトル名の「多重露光」は1つの画面に他のものが写り込んでいるという意味になりますが、「多重露光」という言葉に何を感じますか?
杉田:キャストたちが舞台上で演じてはいますが、自分たちもお客様から受けるものがあるんです。舞台作品は、劇場にいらっしゃるお客様と重なって1つの作品になってくると思っているので、タイトルの「多重露光」とリンクしている部分があると感じます。
小澤:自分たちがお芝居を通してお客様に伝えて、その受取り方によってまたストーリーが出来上がると思うし、それで「多重露光」という作品が完成するのかなと思います。ご覧になった一人ひとり、その作品のイメージは違うかと。
― なるほど。1回目に観たときと、2回目に観たとき。そして杉田さんの“実”と小澤さんの“実”で観たとき、感じることが違うかもしれませんね。
杉田・小澤:その通りだと思います。
― この作品を機に、益々活躍の場を広げていかれるお二人だと思いますが、これからの目標があったら教えてください。
小澤:人の心が動く表現者でありたいなと思っています。ダンサーとしてでもそうですし、僕の表現を見て、怒ったり笑ったり泣いたり悲しんだり、人の心に影響を与えられる表現者になっていきたいです。
杉田:凄い良いこと言うなぁ~。(小澤と顔を合わせて笑う)
僕は目の前のことを1つ1つしっかりとやっていって、共感していただけるような、何かを感じ取ってもらえるような、そんな表現をできる俳優を目指して頑張りたいです。
― それでは最後に、これからこの作品をご覧になる皆さんに、それぞれメッセージをお願いします。
杉田:作品の中にはいろんなキャラクターが出てきますが、ご自分と重なるところが、何かしらあると思いますし、それぞれ感じるものは違うと思います。何かを感じて心に響くものがあったら嬉しいです。
小澤:この「多重露光」を通して、自分の気持ちが確認できるということもありますが、相手がどう思っていたのかということも感じられる作品だと思います。そこで感じたことを一緒に観た人、友達や家族であったり、SNSでもいいと思うので「自分はこう思ったよ」と共有して、また一つ楽しんでいただける、そんな素敵な作品です。ぜひ、ご覧ください。
杉田雷麟(すぎたらいる)
2002年12月10日生まれ、栃木県出身。
主な出演歴は、
【映画】「福田村事件」(2023/森達也監督)、「孤狼の血LEVEL2」(2021/白石和彌監督)、「罪の声」(2020)/土井裕泰監督)、「長いお別れ」(2019/中野量太監督)、「半世界」(2019/阪本順治監督)、「教誨師」(2018/佐向大監督)ほか多数
【ドラマ】「ガンニバル」(2022/Disney+)、「エール」(2020/NHK連続テレビ小説)、「Aではない君と」(2018/TX SPドラマ)ほか
【舞 台 】iaku「フタマツヅキ」主演(2021/作・演出:横山拓也)
【広告】Google「だんぜん、Chromeウィルスチェック」(2023)
小澤竜心(おざわりゅうしん)
2004年12月13日生まれ、秋田県出身。JAZZ ダンス歴14年。
主な出演歴は、
【舞台・LIVE・イベント】 香取慎吾 LIVE「Black Rabbit」(2023)、2012~15「勧進帳」(平成中村座)など歌舞伎に子役として多数出演、音楽劇「二十四の瞳」(2011/徳田吉次役)
【テレビ】「天才てれびくん YOU」(2017〜18)&「Let’s 天才てれびくん」(2014〜16/NHK E テレ)にテレビ戦士としてレギュラー出演。
【MV】RADWIMPS「人間ごっこ」(2022)、Omoinotake「幸せ」(2023)
撮影:ナカムラヨシノーブ
モボ・モガプロデュース 舞台「多重露光」
<STORY>
山田純九郎(稲垣吾郎)は、写真館の 2 代目店主。戦場カメラマンだった父(相島一之)には会ったことがなく、町の写真館の店主として人気のあった母(石橋けい)からは理不尽な期待を背負わされた子供時代。
写真館で育ち、写真に囲まれた人生は、常に写真に苦しめられてきた人生でもあった。
毎年、愛に溢れた家族写真を撮る裕福な同級生の一家があった。45 歳になった純九郎の元に、その憧れの一家の“お嬢様”であった麗華(真飛聖)が訪ねてきた。またその息子、実(杉田雷麟・小澤竜心 ダブルキャスト)と関わっていく中で、純九郎は、かつて強く求めた家族の愛情に触れられそうな予感をもつ。親の威光、無関心、理不尽な期待、そして、隠し持った家族写真…それらが多重露光の写真のように純九郎の頭の中に常にあって、幸せという未来の焦点がなかなか合わない。幼馴染(竹井亮介)や、取引先の中学校教員(橋爪未萠里)が何かと気にかけてくれるが、純九郎に欠落した愛情が埋まることはなかった。純九郎
は、自分の求める愛を、人生の中に収めることができるのだろうか。
脚本:横山拓也
演出:眞鍋卓嗣
出演:稲垣吾郎/真飛聖 杉田雷麟・小澤竜心(ダブルキャスト)竹井亮介 橋爪未萠里 /石橋けい 相島一之
【公演日程】2023年10月6日(金)~ 10月22日(日)
【会場】日本青年館ホール
【入場料金】S 席 \12,500/A 席 \7,500(税込・全席指定)
*未就学児童入場不可 *営利目的の転売禁止
※チケット情報に関しての詳細は、公式ホームページでご確認ください。
(ぴあ、イープラス、ローソン、CHIZU TICKET)
【企画・製作】(株)モボ・モガ
【公式ホームページ】 https://tajuroko.com/
【公式 X(旧 Twitter)】 https://twitter.com/tajuroko