2014年、2015年に続いて2016年10月5日から草月ホールにて音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』が上演される。
「日本人なら知っている唱歌の多くが作者不詳となっているのはなぜだろう」という謎を出発点にして生まれたオリジナルの音楽劇で、耳馴染みのある歌が数多く登場し、その心熱くする物語と美しい音楽が観客の心をとらえて、三度の上演となる。
登場人物は明治時代に西洋音楽を学びにヨーロッパに留学した天才音楽家、瀧連太郎と友人・知人たち。
瀧はこの時代では命懸けとも言えるヨーロッパ留学をするが、わずか5ヶ月で病となり、帰国。23歳でこの世を去ることになる。
この舞台では、留学先のドイツでこの天才音楽家と彼を取り巻く人々の姿が、事実と「if-もしも」を交えて描かれる。
原田優一が初演から続けて演じているのは、瀧と東京音楽学校で共に学んだ岡野貞一。後に立身出世を遂げる岡野だが、本作ではまだ名の知られていない音楽家として登場する。
そして今回初参加となる愛加あゆ が演じるのは、瀧に先立って日本人として初めてヨーロッパに音楽留学した幸田幸。音楽に生きながら、心ひそかに瀧を慕う女性を演じる。
-おふたりの互いの印象は?
原田:今年の春にシアタークリエでの『GEM CLUB』で初めてご一緒させて頂きました。その時に立ち姿というか、いるだけですっとしてお嬢様らしい凛としているところが持ち味としてある方だと思っていました。今回の舞台では瀧に対しても想いとか、いろいろ考えることはあると思います。でも、まず瀧廉太郎の唱歌をその時代の人になって歌っていい人といけない人がいると思うのですが、愛加さんは歌っていい人だと思います。
愛加:良かった~~!!(笑)
原田:難しいことで、なかなかできる人はいない。愛加さんは貴重な女優さんだと思っています。
愛加:『GEM CLUB』の時からお世話になっているのですが、今回、改めて優一さんの力をまじまじと拝見させて頂いています。まず、とにかく面白いんです。(笑) それも役として生きていらっしゃるので、すべてがつながっているし、こちらが何をしてもドンとして受け止めて下さるので、とても有難く思っています。そして歌が素晴らしい!歌稽古の時に佐野(瑞樹)さんが優一さんの歌声を「ヴァイオリンのようだ」とおっしゃっていたのですが、その表現がぴったり。稽古場でも耳が喜んでいます。
―原田さんは3度目の出演ということですが、3度も出演してしまうほどこの作品にひきつけられる点はどこですか?
原田:演出の板垣さんもおっしゃっていますが、この作品は役者同士で芝居を共有する作品、その場で会話をしていく作品なんです。もちろん一語一句台本で決まっているところはありますが、役者同士のやり取りやあり方がつじつまが合わないと成立しない。「人間って?」というところまで考えるような作品で、芝居をやる醍醐味を感じています。
キャストが少人数ということもありますが、ほんの数日で仲良くなって、他のキャストについて「普段どういうことを考えて生活しているのかな?」とか「今日は何か嫌なことがあったのかな?面白いことがあったのかな?」というところまで考えてしまう、作品に持ち込まれてしまうような繊細さを感じます。そこがやっていて面白いなぁと思う点です。この作品ならではの日本人の奥ゆかしさや心の繊細さなどが、影響しているのかな…と思います。
そしてこの作品のテーマが音楽・芸術ですからアーティストとして、とても心に響くものがあります。僕が演じる岡野貞一が瀧廉太郎に「君は天才だけど、私はそうではないから、この音楽というものに端っこだけでもしがみついているんだ」と言う台詞があります。才能ある人はいっぱいいるけれど、芸術ってしがみついてやっていかないといけない世界だと思いますし、特にこの作品はそういう時代の話だと思います。こうした点もとても共感する点です。
僕は今回で3回目の出演になりますが、前回の公演以降に生活で身につけたことや経験から、今回の稽古中に「もしかして岡野さんって、この時、こう考えていたのかもしれない」と新たに気付かされることも多くあります。板垣さんも再演に続いて2度目の演出ですが「あ、俺、今分かった」「この前は気付かなかったけど、こうだったんだ」とおっしゃっています。新しい発見がたくさんありますね。
―3度目の上演となると、これまで観に来てくれた方もたくさんいらっしゃるでしょうし、プレシャーもあるかと思いますが…。
原田:大変なことですね。新鮮味も出さなくてはいけないし、逆にこの作品の持ち味…また観に来てもらえるほどの、好きになってもらった物を受け継いでいかなくてはいけない。役者、クリエイターとしても挑戦していかなきゃいけないところもありますから、すごく考えますね。僕の場合は作品については板垣さんにお任せして、自分は演じる岡野貞一という人を掘り下げていく。観て下さる方に岡野という人の生きざま、音楽への熱さをメッセージとしてどれだけ伝えられるだろうということを考えて稽古をやっています。
ただ瀧廉太郎と聞いただけで「教育番組的な堅い作品だ」と思われやすいのですが、歌も笑いもある。エンターテイメントとしても楽しめる。芝居としても感じるものがある作品なので、難しい作品だと思わないで観に来て下さる方が増えれば良いなぁと思っています。
―では、今回が初出演の愛加さんはいかがですか?
愛加:(前回から参加されているスタッフ・キャストは)作品をよく分かっていらっしゃるので、そこに初めて入ることで、そして板垣さんとも初めてでしたので、最初はとても緊張していました。お稽古を始めてみると、板垣さんが「動きは本人たちの気持ちで毎回違ってもいい」「正解を探すというよりも、その時に生きていれば成立する」とおっしゃるので、本当にその場で生きていないと難しい芝居だと思っています。宝塚を退団して昨年10月に初めてストレートプレイをやらせて頂いて、その後はミュージカルの方が多く、久々にがっつり芝居をしています。板垣さん、原田さん、佐野さん、そして星野(真里)さんという大先輩方から稽古場でいろいろ吸収させて頂いています。
―登米裕一さんの脚本については?
原田:登米さんとはこれまでにも何本か一緒にやらせて頂いていて、彼の良さは人間同士の会話力というのかな。物語は派手ではないが、そこに流れる空気…日本人が持つ独特の雰囲気を舞台上にのせるのがすごく上手い方だと思います。そして、逆に板垣さんがとてもエンターテイメントな方なので、そのギャップを面白く見ています。登米さんの作品は全体が抑えた感じなのです。だから普通の方が書く事件よりもグッと抑えた感じの事件でもスパイスとして効いてくる。瀧廉太郎の病気という事件にも、幸さんや岡野の気持ちという、どこかあったかく感じる付随した要素を入れてくる。登米さん自身が穏やかで優しい、争いごとの嫌いな方なので、脚本にもその空気が流れているなぁという気がしています。
愛加:瀧廉太郎さんの生涯について、結核で早くに亡くなられたということしか知らなかったので、初めてこの作品を資料として読んだ時には、作者不明の曲についてのエピソードなどを本当なのかと思ってしまうほどでした。後から登米さんが想像をふくらませて作ったフィクションだと聞いたのですが、それくらい説得力があるエピソードで、本当かも…と思いましたし、また本当であってほしいなぁとも思うほどで「登米さんはきっと素敵な方なんだろうなぁ」と想像しています。
―日本の唱歌に関わる謎がひとつのポイントになっているのですね?
原田:なぜ多くの唱歌が作者不明となっているのか…、「雪やこんこん」「鳩ぽっぽ」など、瀧さんが作曲したメロディと今、私たちが知っているメロディとはなぜ違っているのか…などの謎があって、それを踏まえて、この芝居が「if-もしも」として出来ています。
―ミステリアスで気になります。愛加さんはそのミステリアスな点は如何ですか?
愛加:ミステリアスな部分もどろどろとしておらず、心地よく最後にぱっと分かる感じで「音楽とみんなの気持ちがここに結びつくんだ」と感じて「謎が解けた」というよりもふわぁっと入ってくるような…幸せな気持ちになります。音楽の聴き方が変わると思いますし、これまで聴いていた曲のイメージもきっと変わると思います。
原田:日本で生活している人なら誰でも歌える唱歌の数々が歌われますが、小さい頃から歌ってきた歌であり、ノスタルジックな気持ちになって我ながら「日本人だなぁ」と思ったりします。どこか日本人の琴線に触れるものがあるんですよね。最後には「ふるさと」を歌いますが、そこでお客さまが泣いたりされるので、唱歌ってものすごい力をもっているんだなぁと思います。
―見逃さないでほしいポイントは?
原田:ぎゅっとつまった90分ぐらいの作品なので、芝居に馴染みのない若い方から芝居好きな方までたくさんの方に楽しんで頂けると思います。音楽人スピリットがあるので、音楽が好きな方はこの作品をきっと好きになって頂けると思います。それから、男性のお客様もすごく泣いて帰られるんですよ。驚くくらいに目を腫らして「良かった!!」と言って下さる男性が多いのです。男の友情という点でぐっとくる方も多いと思いますし、男性の心にもささる内容になっていると思うので、男性の方にも観て頂きたいです。
愛加:どの場面というよりすべてがつながっている芝居で、登場人物はやりたいこと…音楽に命を懸けて必死に生きている人たちなのです。
原田:この前も話をしていたのですが、当時は衛星もないので地球を俯瞰した人がいない時代ですよね。海の先がどうなっているかって、誰も本当に見たことはないわけです。そんな時代にドイツに1ヶ月かけて渡る。明治時代ですから、帰って来られるかも分からないような命懸けの留学だったと思います。
愛加:皆さん命懸けです。その命懸けに生きるひとりひとりを観て頂きたいです。
原田優一
埼玉県出身。9歳よりTV、舞台、ライブ等に多数出演。安定感のあるソフトな歌声と確かな演技力でミュージカルを中心に活動している。『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル 』『ラ・カージュ・オ・フォール』などミュージカルの大作に次々に出演。また『道化の瞳』『Love Chase!!』といった オリジナルミュージカルにも出演。最近では『KAKAI 歌会』オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』等、構成・演出活動にも積極的で好評を得ている。2015年には初のソロCD「いつか」をリリースしている。
愛加あゆ
富山県出身。05年宝塚歌劇団入団、12年より雪組トップ娘役として活躍。14年夏に退団後は、舞台の他、TVドラマ、バラエティに出演。コンサート等の音楽活動も行っている。16年8月に帝国劇場で上演された『王家の紋章』ミタムン役で鮮烈な印象を残す(17年4月再演)。その他の出演作品には【舞台】ファイブ・ファンタジー『FAIRY TAIL』、『GEM CLUB』【ドラマ】『シメシ』、『カサネ』など。10月から文化放送/信越放送にてレギュラー番組「愛加あゆ 琴伝流 音楽のコト」がOA開始となる。
公演概要
公演名:音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』
公演日程:2016年10月5日(水)~10日(月・祝)@草月ホール
脚 本:登米裕一 演出:板垣恭一
出 演:原田優一、愛加あゆ、和田琢磨、白又敦・服部武雄(Wキャスト)、
佐野瑞樹、星野真里
ピアニスト:YUKA
チケット料金:S席8,000円、1階席6,800円、2階席6,000円、3階席3,300円 ※未就学児童入場不可
お問合せ:株式会社ショウビズ 03-3415-8832 http://www.show-biz.jp
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