出演者は大学教師・ジョン(田中哲司)と女子学生・キャロル(志田未来)の2人だけ。
彼女はそれを“セクハラ”と呼んだ。
だが彼は“被害者は自分だ”と思った。
どちらが被害者なのか、加害者なのか…
本当は何が起こったのか?
観劇後にはけんけんがくがく、話題沸騰の舞台が11月6日の初日を前に、公開フォトコールと囲み取材を行った。
【公開フォトコール】
公開されたのは問題の“事件”の場面、約18分。
2人の会話は、それぞれの感情と理論とが竜巻となってぶつかり合うように激しい。会話で格闘しているかのよう。
だが会話として成立しているようで、実はまったく通じていないようにも見える。
この場面が、どのように事件となっていくのか。
2人、それぞれの側から見ると、この場面がどう再現されることになるのか。
是非とも、眺めてみたくなった。
【囲み取材】
白熱の演技を終えて、その舞台に再び姿を見せた田中と志田。平台に並んでみると2人の身長差が大きく、驚かされた。舞台上ではほとんど気にならなかったのは、さすがの舞台マジック。
仕上がりは「完璧」と田中。これが初舞台の志田も「そんな感じです」と自信にあふれていた。
とはいえ、志田は「怖くて、これまで(舞台を)逃げてきたので、今回挑戦してみようと」「ずっと自分は安全なところにいるなぁと思いまして、新しいことに挑戦してみたいなと思いました」と舞台への思いを語り「(やってみて)難しいですね。でも、まだ始まってないので。今は日々勉強です」と生き生きとした表情を見せた。
それぞれの役については、田中が「まったく普通の役です。僕は被害者だと思ってやっています。いや、もう、ひどいなぁと思っています、キャロルに対して」と思わずといった感じで言えば、志田も「私もキャロルは被害者だと思っているので、共感できる部分が多くあります」。
さて、観客はどちらの側に立つのでしょうか?
初舞台の志田の演技を、田中は「最初から完璧だった」と言いながらも「ミスするのを見ると嬉しい。未来ちゃんもミスするんだ」と安心したそう。
一方の志田は映像では共演したこともあった田中を「舞台で輝く方だと思った」。
そんな完璧な2人の生み出す、完璧なディスコミュニケーションを描く「オレアナ」は、渋谷・パルコ劇場で11月29日まで。地方公演もあり。
<公演概要> 「オレアナ」
作=デビッド・マメット 翻訳=小田島恒志 演出=栗山民也
出演=田中哲司・志田未来
<東京公演> 2015年11月6日(金)~29日(日)PARCO劇場 (11/6プレビューオープニング、11/7初日)
<豊橋公演> 2015年12月2日(水)穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
<北九州公演> 2015年12月5日(土)~6日(日)北九州芸術劇場・中劇場
<広島公演> 2015年12月8日(火)アステールプラザ大ホール
<大阪公演> 2015年12月12日(土)~13日(日)森ノ宮ピロティホール 他
■問い合わせ先:パルコ劇場 03-3477-5858 http://www.parco-play.com
【ストーリー】
大学教授のジョンは、大学教職者なら誰しも憧れの終身在職の権利に手が届くところまで来ており、安定した晩年の設計図、新居の契約のことで頭がいっぱいだ。その彼の研究室に教授の授業についていけない、講義=教授の言葉や内容が理解できないという一人の女子学生、キャロルが現れ、それでも試験にパスしなければならないと懇願する。 ジョンはキャロルと会話を続けながらも新居の契約のことで度々鳴る電話に出たり、半分上の空。しかし紳士的にキャロルの相談に乗るような態度を取っているうち、最初は自分が「分かっている」ことを学生に「分からせる」立場である教授のほうにあったはずの、その会話の優位性は、言葉を尽くせば尽くすほど、いつしか女子学生のほうに移っていく。そしてついには、キャロルがジョンとの一連のやりとりをセクシャル・ハラスメントとして大学当局に訴え、さらにそれを、事実としては起きていないレイプ事件にまで問題を発展させる。 前途洋々だったはずの教授の未来は、たった一人の女子学生とのディスコミュニケーションによって、打ち壊されていく…。