第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン「未来のキング&クイーンを探せ!」ミュージカル次世代スターオーディションの募集が、9月1日より開始された。今年で開催44回目を迎える「ホリプロタレントスカウトキャラバン」通称TSCは、榊原郁恵(※注)、深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみら錚々たるメンバーを輩出した伝統のオーディション。
今年のテーマは『ミュージカル次世代スター』
映像だけにとどまらず、舞台の分野でも、将来的に俳優界のキング・クイーンとなるような、男女の原石の逸材を求めるべく、 “世界に羽ばたける次世代ミュージカルスター”を発掘する!
この度、ホリプロ主催のミュージカルの中でも代表的な作品「ロミオ&ジュリエット」で初のミュージカル舞台に立った大貫勇輔とフランク莉奈にインタビューを遂行! 今では数々の舞台に立ち、活躍の幅を広げている二人が舞台の魅力、俳優としてのモットーなどを語ってくれた。
※注・・・※榊原郁恵さんの「榊」は木へんに神が正式表記となります。
― 今年はコロナ禍の影響でエンタメ業界も厳しい状況ですが、外出自粛中はどのように過ごされていましたか?
大貫勇輔(以下、大貫):今は『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』の稽古中ですが、最善の注意をしながら進めています。日常生活でも対策をしっかりして気を付けて過ごしています。
フランク莉奈(以下、フランク):私は3月に大学を卒業しました。春夏の舞台の全公演が中止になってしまったので、空いた時間を使ってオンラインの演技クラスを受講しました。海外のクラスを5種類くらいです。時差のため夜中の3時くらいから授業が始まるので、昼夜逆転しまいまるで吸血鬼のような生活で(笑)。日本にいると海外のレッスンを受けるチャンスがないので、貴重な経験でした。
でも、演劇は(演じる人たちが)同じ空間にいるからこそ感じるものがたくさんあるので、(このレッスンは)また別ものだなと。ただ、オンラインでも人対人なので感じ取るものはありました。
― これまでできなかったことや、自分と向き合う時間にもなったのでしょうか。
フランク:今までは、自分の感情に対して「こう感じるのは違うのかな?」と、自問自答することが多かったんです。一人になる時間を得て、初めて自分の気持ちや体調などをそのまま受け止めることができました。自分に対してとても素直になれる期間でもありました。
大貫:僕は舞台「ねじまき鳥クロニクル」が途中で中止になってしまったので、1か月くらいは全く自宅から出ない生活でしたが、その後は週末に実家のスタジオの手伝いをしていました。1か月ぶりに体を動かしてみたら全然動かなくて・・・。これはマズい!と思って、近所を走ったり自宅でストレッチをして過ごすようにしました。
― お二人とも、幼少のころからダンスや演劇に携わってこられましたが、今回のTSCに応募される方々も11歳~20歳という若い方です。
大貫:僕はありがたいことにダンスが身近にある環境の中で育ったので恵まれていたと思います。そしてプロとして17歳からキャリアをスタートし、6年間くらい経験を積んでからホリプロに入りました。本当にラッキーなことが続いて今の僕があるわけですが、オーディションを受けて何かを目指したいと思ったとき「自分一人の力は大きくもあり小さくもある」と感じました。自分以外のパワーが助けてくれることが多かった気がします。なので、いつも支えてくれている周りの方に感謝し、お客さんを感動させたいという思いを持ってオーディションに挑んでもらえたらいいですね。ただ“俳優になりたい!”というだけではなくて、その先に何を目指しているのかを考えながらチャレンジしていくと踏ん張ることができると思います。
フランク:私は8歳の時に1年間アメリカで暮らしていて、その時に出た学習発表会で演劇に目覚めたんです。「演技って楽しい!」と思って、日本に帰ってから地元の児童劇団に入りました。元々女優になりたいという気持ちと、歌手になりたい気持ちの両方があって、歌と演劇の両方あるのがミュージカルだった。特にミュージカル女優を目指していたわけではなかったのですが、運命的にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のオーディションを見つけて「これに出たい!」と思ったんです。他にどんな方が出演されるのかとか、後から知ってとんでもないものに応募したと知りました(笑)。そこからずっとミュージカル女優として続けさせていただいています。10代の皆さんには「自分を否定しないでほしい」ということを伝えたいですね。色んな人に「自分らしく」とか「個性を持って」とか言われると思うし、自分を他の人と比べてしまったりすることもあるかもしれません。例えば、自分の好きなものや嫌いなもの、自分が感じたことを一つ一つ大事にしてほしい。それが自分らしさを見つけるきっかけにもなると思うし、表現の幅を広げていくと思います。
私も最近思うようになったんですけどね(笑)。最近になって、誰かのためになれたらいいなと思うようになりました。大貫さんは幼いころからそういう考えを持っていらして凄いです。
大貫:僕は母親から「いい表現者である前にいい人間であれ」という教えを受けていたので、母の影響も大きいですね。
― このオーディションに合格して、ミュージカル俳優としての環境を与えてもらえるということはとても素敵ですね。
大貫:あと、オーディションを受けるということがとても素晴らしい経験になると思います。僕の知り合いの子が前回の「ビリー・エリオット」のオーディションを受けてラスト10人まで残ったんですが、最終的には落ちてしまったんです。その時の彼の悲しんでいる様子は僕も見ていて胸が痛かった。でも、そのあとに他のビリーたちに「頑張れよ!」とエールを送っているんです。それを見たらまた感動してしまって。その後、彼はレッスンの受け方や過ごし方が変わって今でも頑張っています。
だから、今回のTSCも何かにチャレンジすることによって、もしかしたら挫折することもあるかもしれないし、見事合格するかもしれない。結果はわからないけれど、その経験は絶対に自分の財産になると思います。
― お二人がミュージカル作品として初めて舞台に立ったのが「ロミオ&ジュリエット」です。当時のことを振り返っていかがですか?
大貫:僕は“死のダンサー”として出演していたので、歌とセリフはありませんでしたがおいしい役でしたね(笑)。
フランク:大貫さんの「死」は本当に凄かったです(笑)。舞台稽古で結婚式のシーンを誰かが写真を撮ってくださって、それを見て最初は「素敵だなあ」と思っていたら、よく見たら上の方に(大貫さんが)いて、「怖っ!」って(笑)。
大貫:心霊写真のようにね(笑)
フランク:存在感が怖かった。本当に「死」で。強烈でした。
― 「ロミオ&ジュリエット」で、一番最初に舞台に立った時の心境はいかがでしたか?
フランク:もう必死過ぎて9割くらい記憶をなくしていました(笑)。本当に「ロミジュリ」のことしか考えていなかったです。舞台セットや他のキャラクターを含め、その世界観に飛び込んでいく感覚でした。
大貫:僕は、初演の時はできるだけお客さんが自分のほうを見てくれるように演じていましたね。いかに言葉を発せず、言葉を発している人よりも目を引く存在であるように・・・ということを考えて舞台に立っていました。今は、作品がよくなるためにどうしたらいいかを考えますが、あの時は作品よりもいかに自分を目立たせられるか・・・って感じで(笑)。
フランク:どうやって自分を目立たせるの?
大貫:う~ん・・・。(しばらく考えて)意識かな。他の人がたくさん動いていたら自分は動かないで、ちょっと静かになっていたらわざと動くとか。今、こうするとこっちに目が行く・・・みたいに、観客席から自分を見ているような感覚で存在する感じかな。本当に、その時はそんなことばかり考えていました(笑)。
― その時は初めての「ロミオ&ジュリエット」ですから、必死ですよね。
フランク:本当に必死でした。
大貫:そうですね。
― 最近は、映画俳優、ミュージカル俳優、ダンサーなどの垣根がなくなってきていて、表現者として活躍されている方が舞台の上に立つことの喜びを口にしています。お二人にとって、舞台の魅力は何だと思いますか?
フランク:舞台は全てがその場所に集まっているんです。一場面を切り取って撮影したり、一人だけをアップでとらえることなく、物語の時系列で進んでいき、そのままの世界観の中でみんなと触れ合いながら作っていく・・・物語を駆け抜けるという達成感がとても大きいと思います。その達成感は舞台ならではないでしょうか。そして、公演の日数を重ねていきながら深めていくことができるんです。もちろん初日の公演は完成形ですが、公演を重ねていく中で新しい発見もある。そんな中で一番嬉しいのは、お客様の反応を直に受けることができることです。以前、「ピーターパン」の舞台でタイガー・リリーを演じた時に、子供たちの反応が本当に凄くて。舞台上にいるときでも「リリー!!」って叫んでくれるんです。これって絶対に舞台でしか味わえない経験で、とても素敵なことだと思います。
大貫:うん、そうだよね。やっぱり、ライブ感! それに勝るものはないですね。あと、稽古が1か月~2か月あって、キャストみんなが集まって作り上げるという作業は映像との大きな違いだと思います。1人で行う作業がみんなでできる、その時間が楽しい。1つの役について色んな角度からみんなで考えてトライしてみる。自粛期間が明けて、久しぶりに舞台の稽古したときは本当に感動しました。「わぁ~、みんなで稽古するってなんて素晴らしいんだ!」って(笑)。僕は稽古の時間がとても好きですね。
フランク:濃さが違いますよね。たった2か月でも、どうしてこんな短い時間で家族みたいになれるんだろうって感じます。深いですね。
― 同じ公演でも、初日の舞台と千秋楽では違うものを観ているかと思うくらいに感じることがあります。何回観ても今日はどんな舞台を見せてくれるんだろう」と楽しみになりますね。
フランク:公演中にも成長していくんだと思います。私は家族を(観劇に)誘うときに、初日と中間日と千秋楽の3回来て!って言うんですよ(笑)。
― それでは、舞台に立つときにいつも心がけていることはありますか?
大貫:最近は、役になりきるためにしっかり準備することです。例えば、“死のダンサー”だったら体を絞るなど。あと本番前には自分の決めたルーティンを必ずやるようにしています。それが自分を助けることになるんです。
― そのルーティンとは?
大貫:作品によって違いますが、「ビリー・エリオット」の現場では、25~40分のストレッチ、25分のバーレッスン、15分の筋トレをウォーミングアップとして自分に課しています。本番でもやります。あと、移動中に発声練習25分です。
フランク:そんなにやったら(本番前に)疲れちゃうんじゃないですか?(笑)
大貫:それくらいやってちょうどいいくらいなんだよね。
フランク:さすが!!
大貫:「ビリー・エリオット」のドリームバレエはとても大事なシーンですし。そのくらいやっておかないと逆に体が動かないですね。いつでも体が動くようにしておかないと不安なので、自分のためにやっています。
フランク:私は役の目的を絶対に忘れないように心がけています。どんな役にも目的やゴールがあると思います。それを忘れて舞台に立つと色んなことがブレてしまう。役によって目的は違うし、舞台上のお話の中での目的とその役そのものの人生の目的は別のベクトルがあると思いますが、それだけは忘れないで舞台に立つことを一番大切にしています。稽古期間にその“目的”を模索しています。「この人は何をしたいんだろう」ということを見つけることが稽古中の課題です。
― 俳優にとって、一番大切なことは何だと思いますか?
大貫:大切なことはたくさんあるので・・・自分の中にあるルールを守ることではないでしょうか。例えば、「準備をちゃんとする」「感受性を豊かにする」「人を思いやる」「自分にストイックである」など、色々あると思いますが、そういう自分が決めたルールをちゃんと守ることが大事だと思います。ルールというかモットーというのかな。
フランク:そうですね、たくさんあるけど・・・。日常生活でもずっとときめいていられるようにすることかな。もちろん落ち込むときもあるかもしれないけど、ときめきをたくさんもっていたほうが気持ちが柔軟でいられると思います。とにかく日々、自分の気持ちに敏感に過ごすことが一番大事だと思っています。あと、自分自身を失わないために、自分の思ったことを自分だけは認めてあげることが大事。世の中に対する意見もキチンと持った役者でいたい。そのためには勉強も一生続けないといけないし、自分の言葉で話せるようにしたいです。
― 輝かしいご活躍をされていらっしゃいますが、そのためには影で挫折したり落ち込むこともあったかと思います。それを克服するためにはどうされましたか?
フランク:克服できないです(笑)。ダメなときはまず受け入れる。「あ、今ダメなんだ」って自分と向き合います。私はいつも日記を書いていて、言葉にして気持ちを整理してから納得しています。1日2時間くらい書くこともあります。人生は上がったり下がったりするものだから、波はずっと続いているんだと思うようにすると「ドン底」と思ったときも、きっと上がっていくことができるのではないでしょうか。辛いときのほうが成長できるものですし。
大貫:莉奈が言ったように、絶対にいいときもあれば悪いときもあるので、そういうことに影響されない自分であること。僕は何か思ったら誰かに連絡しています。ちょっとしたきっかけで何かを助けられるかもしれないと思って。人と人の繋がり意識しています。
フランク:誰かと話すことっていいですよね。
大貫:そうだね。嬉しいことも苦しいことも共有することは大事だよね。
― では、最後にこれからオーディションに応募される方、夢を抱いている方にメッセージをお願いします。
大貫:たくさんの色んな方と関わることができる素晴らしいお仕事で、役によって色んな人生を過ごすことができる、色々な経験ができるのが“俳優”です。ぜひ、たくさんの方にチャレンジしていただいて、どんな結果になったとしても素晴らしい経験になると思うので、ぜひ楽しんで挑んでほしいと思います。
フランク:いいことも悪いことも、行動したことは全部いい経験になることになると思います。素敵な出会いもたくさんあるし、色んな役を通して色んな人生を生きることができることが役者の一番の魅力だと思います。自分を信じてチャレンジしてほしいです。
【大貫勇輔(おおぬき・ゆうすけ)プロフィール】
1988年生まれ。現在、主演アニメ『富豪刑事Balance:UNLIMITED』が放送中。9月11日(金)よりミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』(オールダー・ビリー役)、そして10月15日(木)よりドラマ『ルパンの娘』続編(初回15分拡大、円城寺輝役)への出演が控えている。
【フランク莉奈(フランク・りな)プロフィール】
1993年生まれ。11月2日(月)よりミュージカル『RENT』(モーリーン役)、2021年1月15日(金)よりミュージカル『パレード』に出演予定。
★第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン
「未来のキング&クイーンを探せ!」ミュージカル次世代スターオーディション
【オーディションの流れ】
オンラインで応募・リモートでオーディション!スマホでカンタンに参加できます!
応募資格
11歳(小学6年生以上)~20歳の男女(国籍不問)
※2021年4月1日時点で20歳の方までが対象
現在芸能プロダクションに所属していない方に限ります。
未成年者は親権者の同意が必要です。
応募方法
WEBエントリーのみとなります。
※プロフィール、写真、歌唱動画が必須
詳しい応募方法はホームページにて⇒https://www.horipro.co.jp/tsc2020/
エントリー期間
~2020年9月30日(水)23時59分
【お問い合わせ】
第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン実行委員会
horipro.tsc2020@gmail.com
*当「ミュージカル次世代スターオーディション」に関するお問い合わせに限ります。
*審査結果に関するお問い合わせには回答いたしかねますこと、予めご了承ください。
<Daiwa House presents ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』>
【オープニング公演】2020年9月11日(金)~9月14日(月) TBS赤坂ACTシアター
【東京公演】2020年9月16日(水)~10月17日(土) TBS赤坂ACTシアター
【大阪公演】2020年10月30日(金)~11月14日(土) 梅田芸術劇場メインホール
公式サイト:https://www.billyjapan.com
インタビュー撮影:ナカムラヨシノーブ