草彅剛が挑む、シェイクスピア不朽の名作『ヴェニスの商人』が、2024年12月6日(金)より2025年1月10日(金)まで、東京・日本青年館ホール、京都・京都劇場、愛知・御園座にて上演される。
演劇史の巨人、ウィリアム・シェイクスピア。時代を超えて愛され続ける数々の名作を世に残しているが、中でも『ヴェニスの商人』は深い人物描写と痛快な展開で圧倒的な人気を誇る最高傑作のひとつ。現代演劇界で最も実力のある演出家の一人である森新太郎が演出を務め、シェイクスピア作品初挑戦となる草彅剛が稀代の悪役・シャイロックを演じる。
そして、シャイロックの娘で恋人のロレンゾーと駆け落ちをするジェシカを演じるのは華優希。宝塚歌劇団で花組トップ娘役を務め、退団した後も様々な役で私たちを楽しませてくれた彼女が、また新しい顔を見せてくれる。初めてのシェイクスピア作品で、どんなジェシカを演じられるのか、自身も楽しみにしているという華さんに話を聞いた。
― シェイクスピア作品に出演することが一つの夢だったとお聞きしましたが、華さんが感じるシェイクスピア作品の印象をお聞かせいただけますか?
とにかく言葉が豊かだという印象があります。その中に読み取れないほどたくさんの意味や解釈が隠されていると感じています。今作でも、森さんの演出やお話を聞いて、こんな意味があったのか・・・と思うことがあって。掘れば掘るほどいろんなものが出てきて、本当に奥深くて、そして言葉遊びが面白い。そういうところをもっと理解できたらなと思っています。
― 時代を超えて愛されている作品であって、これまでも様々な演出家の方のいろんな解釈のもと、たくさんの舞台が上演されていますが、華さんは今作をどのように捉えて、ご自身が演じられる役をどういう風に演じようと考えてらっしゃいますか?
初めて台本を読んだときに、この作品には色々なテーマがあると感じました。登場人物1人1人の人生が違う物語のように組み合わされていて、すごく面白いんです。
『ヴェニスの商人』は喜劇と言われていますが、草彅剛さんが演じられるシャイロックはユダヤ人であっての悪役。その悪役が成敗されて、ユダヤ教からキリスト教に無理やり改宗させられてめでたし!めでたし!で終わる話ですが、現代に生きる私たちには何か納得しきれないところもあると思います。
まだ稽古中ではありますが、そこをどういう風に組み立てていくのか、私が演じるジェシカという役もユダヤ人の娘でありながら、ユダヤ人の父に反発する気持ちもあって、「この家は地獄」「私と父とでは考え方が別」というセリフがあります。反発心とそこを地獄と感じる気持ち、若い恋人のロレンゾーと駆け落ちする気持ち、その若いエネルギーを大事にしていきたいと思いつつ、改宗についてももう少し噛み砕いていけたらと思っているところです。
― なるほど。確かに宗教に関しては私たち日本人には全部は理解しきれないとことはあるかもしれませんね。そんな中で、ジェシカという人物は自由奔放であり、物語をかき乱すようなところもあると思います。そんなジェシカと華さんご自身と似ていると感じるところ、または自分とは違うなと感じるところはありますか?
私はジェシカほどの行動力はないですね(笑)。本当に凄いですよね、ジェシカは。しかも、駆け落ちするとき、父親の財産を全部持ち出すシーンがあるんですが、それができるのも凄い。当時、ユダヤ教からキリスト教に改宗することは、本当にあり得ないくらい大きなことなんだそうです。それは今だったら何をすることに当たるのだろう、どのくらいの強さなんだろうかと考えます。ジェシカの行動は、まだ世の中全てを分かっていないからこその若さからくる力であるかもしれません。でも、やっぱり若い女の子の傷つきやすい多感な心を持っていると思います。自分が思い描いていたセリフも、森さんから「そうじゃなくていい」と言われたところもありますし、本当に色んなやり方があるんだろうなと思うととても楽しみです。
私自身が一番行動を起こせたと思うのは、大学進学をやめて宝塚歌劇団に行くと、それも親の反対を押し切って行動したことです。それも若さのエネルギーだったのかなと思えますね。そういう、心の奥に秘めているものとか、ここだけは曲げないというところがあるのはジェシカと似ているかもしれないですね。
― どんなジェシカ像が現れるのか、幕が開くまでわかりませんね。
はい、まだどんなジェシカになるか私自身もわからないです(笑)。なので、お稽古の中でいろんなジェシカを試してみたいと思っています。1つに決めつけないで、こういうやり方もできるし、こういう解釈もあるんだと試みてみたいです。私が凄く怒って言うセリフも「そこは明るく言い放っていいんだよ」と言われたりしますし、本当にいろんなやり方ができるんだと感じています。
― 役作りをするために、何か作品を観たり、本を読み込んだりされましたか?
いつもは他の作品を参考にすることもあるのですが、今回は台本の中にいるジェシカと向き合いたいと思ったので、あえて他の作品は観ませんでした。そしてご一緒する方々のお芝居を受けて、どういうものが生まれるかというところに重点を置きたいと考えていますので、その化学反応を楽しみにしています。
― 今作で初めて共演される草彅さんの印象はいかがでしょうか?
とにかく素晴らしい方です。これまでのいろんな映像作品も拝見していましたし、なんて物語に引き込む方なんだろう・・・と感じていたんですが、今回も本読みのときから、凄い熱量を感じました。シェイクスピア作品はとても文章の情報量が多いので、ともすればサラッと流れていってしまって、今の(話、言葉)は何だったんだろうと思うこともあるのですが、草彅さんが発せられるひと言ひと言が全部心の奥に染み込んでいくんです。一緒にお芝居をして勉強させていただけることが本当にありがたいです。
でも、お人柄はとても優しくてフランクで、どなたに対してもフラットに接してくださいます。「大丈夫だよ」という空気を自然に作ってくださるんです。
― そんな草彅さん演じるシャイロックですが、シャイロックのような男性をどう思いますか?
実際にいたら怖いですよね。シャイロックはとても賢いじゃないですか。言葉巧みに色んな人を言いくるめていくので、あまり近づきたくないし、できれば関わりたくないですよね(笑)。
― 華さんが演じるときにいつも心がけていることは?
舞台に立つまでにはいろんな時間があると思います。それは役によって、作品によって、そのときの自分の状態によっても様々なアプローチがあると思いますが、やはり舞台の上に立ったら、とにかく相手と周りの環境に集中するということです。自分がこれをやりたい、こういうプランで演技をしたいということよりも、相手の芝居に集中することを心がけてやってきました。相手が渡してくれた芝居をしっかり受け取って、何が自分から出てくるか。それは賭けでやるのではなく、そこまでにその役を自分で作った時間がちゃんとあれば、その役として返せるんだろうなと。そこまで信じられるところまで持っていかないといけないと思っています。
― それでは、今後挑戦してみたい役は何かありますか?
強い役をやってみたいです(笑)。でも、舞台では意外と強い役が多いかもしれないですね。私自身は普段は弱気なんですが、舞台ではけっこう強気な役が多くて。自分が普段発することができない言葉だったり、言えないことも役を通してだったらいろんな表現ができてとても楽しいので、これからも色々な役に挑戦したいです。
― 最後に、公演を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
400年前からあるシェイクスピアの作品で、様々なところで上演されてきたお芝居の、今回ジェシカという役を演じさせていただけることをとても嬉しく思っています。私自身、すでにこの作品の魅力をとても感じていますので、舞台を観に来てくださるお客様にも、シェイクスピアの言葉や「ヴェニスの商人」という作品の素晴らしさをきちんと受け取っていただけるようなお芝居ができたらなと思っています。ぜひ楽しみにしていらしてください。
【華優希(Yuki Hana)】
1993年11月13日生まれ。京都府出身。2014年、宝塚歌劇団に100期生として入団し、『はいからさんが通る』花村紅緒役、『ポーの一族』メリーベル役などを経て、2019年花組トップ娘役に就任。2021年『アウグストゥス』/『Cool Beast!!』で退団。退団後は連続テレビ小説「らんまん」(NHK)、「THE MYSTERYDAY〜有名人連続失踪事件の謎を追え〜」(NTV)など、ドラマにも出演し、新たなフィールドへも表現の場を広げている。退団後の出演舞台に『千と千尋の神隠し』『キングダム』『マドモアゼル・モーツァルト』がある。9月21日22日に東京国際フォーラムホールCで開催される 柚香 光 1st Solo Concert『TABLEAU』にゲスト出演。
■STORY
貸した金を返せなかったら、あんたの体から、
きっかり1ポンド、切り取らせてもらおうか ――――
高利貸しのシャイロック(草彅剛)は高潔な商人・アントーニオ(忍成修吾)にそう突きつける。
親友・バサーニオ(野村周平)が富豪の美女ポーシャ(佐久間由衣)に求婚する為の資金を援助したいアントーニオはシャイロックの申し出を受け入れる。
アントーニオの助けを得てバサーニオはポーシャのいるベルモントに向けて旅立つ。供の友人・グラシアーノ(大鶴佐助)がポーシャの侍女ネリッサ(長井短)と恋仲になるなど、全ては順調に運んでいた。
一方で、シャイロックの娘・ジェシカ(華優希)がバサーニオらの友人・ロレンゾー(小澤竜心)と駆け落ち。それを知ったシャイロックは激昂する。
更に、アントーニオの財産を積んだ船が海に沈んでしまう。
シャイロックは「肉1ポンド」の契約をかざし、容赦なく冷酷にアントーニオを追い詰める……。
公演概要
『ヴェニスの商人』
脚本:ウィリアム・シェイクスピア
訳:松岡和子
演出:森新太郎
出演:草彅剛
野村周平 佐久間由衣 大鶴佐助 長井短 華優希 小澤竜心 忍成修吾
春海四方 大山真志 青柳塁斗 石井雅登 冨永竜 田中穂先
天野勝仁 久礼悠介
スタッフ
美術:松井るみ
照明:佐藤啓
音響:けんのき敦
衣裳:有村淳
ヘアメイク:岡田智江
音楽:落合崇史
演出助手:守屋由貴
舞台監督:澁谷壽久
【東京公演】 日本青年館ホール:2024年12月6日(金)~22日(日)
【京都公演】 京都劇場:2024年12月26日(木)~29日(日)
【愛知公演】 御園座:2025年1月6日(月)~10日(金)
【チケット料金】S席 \13,000/A席 \9,500/車イス席 \13,000(税込・全席指定)
※チケット情報に関しての詳細は、公式ホームページでご確認ください。
【製作】TBS、CULEN
【公式ホームページ】venice-stage.jp
【公式X】https://x.com/venice_stage
【公式Instagram】https://instagram.com/venice.stage/
撮影:ナカムラヨシノーブ
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