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鈴木勝吾&安西慎太郎インタビュー!「今、僕らが伝えたいことを届けたい」 混沌とした世の中に一石を投じる! 饗宴『世濁声』

饗宴「世濁声」/Astage-1

鈴木勝吾と安西慎太郎が作・演出・出演する饗宴「世濁声」(よどみごえ)が、11月9日より上演され、いよいよ19日に千秋楽を迎える。

会場は、西田大輔がプロデュースする“エンタテインメントレストラン”DisGOONieS。約一時間のお食事の後、演目を鑑賞するというスタイルで作品を楽しむという特別な時間。会場の全ての空間を舞台とし、二人芝居に挑む鈴木勝吾さんと安西慎太郎さんに、本公演への思いを聞かせてもらった。

― まずはこの作品をやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

安西慎太郎(以下、安西):まず僕が2人芝居をやりたいと思っていて。好きな人と好きなものを作る・・・当たり前のようでなかなかできないことなんですが、せっかくなら一番好きな人とやりたいという思いが強かったので、僕のほうから勝吾さんに「ぜひ一緒にやっていただけませんか?」と声をかけさせていただいたんです。そうしたら勝吾さんが「やろうよ!」と快く承諾してくださって、企画がスタートしました。

饗宴「世濁声」/Astage-3

― 今回、お食事と舞台を楽しむスタイルにした理由は?

鈴木勝吾(以下、鈴木):この形態は以前から西田大輔さんが始められていたんですが、実はもっと早くからやっておけばよかったなと感じているんです。どういう舞台にしていこうかと慎太郎と考えていたところ、これまでお付き合いのある演劇を作ってる方にいろんなご相談をさせていただく中で最終的にこの店で上演することが決まりました。

― 今回の企画はいつ頃から始まったのでしょうか?

安西:僕がやりたいと思ったのは昨年の夏で、勝吾さんにお声がけしたのは、年末くらいでした。

饗宴「世濁声」/Astage-9

― コロナ禍がだんだん収束してきた時期でもあったのですね。

安西:そうですね。やっぱり、みんなと交わりたいという思いが強くなっていた時期だったと思います。

― 劇場の舞台とは違う場所でお芝居をすることで、何か新しい感覚を持ち合わせていたりしますか?

安西:このレストランでは過去に3回くらい出演させていただいていますが、お料理やドリンクが出てきたり、皆さんが日常の中で訪ねてくる場所で演劇を行うということにとても大きな意味があるのではないかと考えました。お客様との距離も近いので、きっと我々の匂いも、お客様の匂いもするだろうし、本当に触れられるくらいの距離で見られるので、演じる役者もとても緊張感が高く役者として鍛えられる場所だと思います。

饗宴「世濁声」/Astage-5

― 今回は基本的に二人芝居ということですが、特に難しいことはありますか?

鈴木:僕は難しいというよりも二人芝居が初めてなので、こういう感じになるのかという新鮮な気持ちでした。

安西:どうしてもセリフ量が多いですね(笑)。脚本は鈴木勝吾さんが書いてくださったのですが、その脚本がとても情熱的で生きている言葉なんです。本当に立体的に見ることができる言葉がたくさんあって、その言葉を死なせないように人間として操り、役者としてしっかりセリフとして吐き出すということが、当たり前ですけど一番難しいことであり必要なことだなと思っています。

― 最初から鈴木さんが脚本を書くというように決めていたのですか?

安西:最初はダブルスタンバイみたいな感じで各々が書いてみて、今回は勝吾くんの脚本にしようということになりました。勝吾くんの脚本なので、演出も勝吾くんが担当して、僕も協力できるところは協力するという形になりました。

饗宴「世濁声」/Astage-13

― 舞台の脚本はこれまでも何本か書かれていたのでしょうか?

鈴木:これまでも何本か書いてましたが、上演するために最後まで書き上げたのはこれが初めてだったので、すごく新鮮な体験でした。

饗宴「世濁声」/Astage-21

― ゲストの方も豪華な俳優の皆さんが揃いました。

安西:シンプルに毎回楽しみです。皆さん素晴らしい俳優さんなので、特に求めることはなく、ただ楽しく同じ時間を共有していれば、自然と化学反応というか、何かが起こると思うので、とにかくゲストの皆さんには生き生きと楽しく参加していただければと思っています。

鈴木:脚本を書く前から、ゲストがいたら楽しそうだよねと話していたんです。そうは言っても、スケジュールが合わないということもあるんですが、奇しくも今回は全員が出演してくれることになって、凄く嬉しく思っています。

― 今回の公演は、作品を観るというより、演者と一緒に体感するような感覚がより強いかと感じますが。

鈴木:劇場の舞台も体感していただくという意味では同じだと考えていますが、この場所でやるということはより体感する要素が強くなると思います。おそらくこの会場に初めていらっしゃる方が多いと思うので、何か新しいものを発見して知ってもらうことができれば嬉しいですね。

饗宴「世濁声」/Astage-26

― ところで、『世濁声』というタイトルはどのような意図で作られたのでしょうか?

鈴木:まず、「タイトル決めなきゃいけないね」ということになったのですが、なかなか決まらなくて・・・。『Arcana Shadow』という舞台を作ってるときに2人で集まって、最初は「灯」「炎(ほむら)」「雷鳴」「轟き」「渇き」など何十本なんか上がっていく中で、「濁る」が候補に挙がってきたんです。それに「。」をつけるか、つけなかという話しながら検索していたら、「濁世(じょくせ)」という違う言葉が出てきて。調べたら、仏教用語で“濁り汚れた世の中”や“混沌とした世の中でどうしようのないようなこと”というような意味でした。そもそも僕らが濁った声で、声を上げたいという企画でもあったので、「濁る」も「濁世」のどちらもありだなと思っていたら、慎ちゃんが字を並び替えて「世濁声」がいいんじゃないかと。もう天才か!って(笑)。それで行こう!となりました。

― 上手くハマったんですね。

鈴木:めっちゃ悩んだ甲斐があったよね(笑)。
安西:めちゃくちゃ悩みましたから、良かったです(笑)。

― それでは、お二人がこの公演で伝えたいことがタイトルに詰まっているということでしょうか?

鈴木:この「世濁声」というところから脚本を書き始めたのですが、今回の企画でやりたいことや、僕らの今の気持ちというものをこのタイトルを決めるときに1つの目標として置くことができました。

安西:意味はシンプルなんですけどね(笑)。

鈴木:そうですね、意味は「世濁声」でしかない。サブタイトルに「GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」とありますが、観終わったらもうそれでしかないという気もしています。もちろん(意味が)深いと思っていただければ嬉しいですけど。

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― 「世濁声」と「GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」はイコールになるのでしょうか?

安西:意味のイコールではないと思います。
鈴木:俺の中ではほぼ一緒なんです。“腐った世の中に声を上げなさい、美しいネズミでいないで目覚めなさい”ということなので、全く意味が違うとは思えないんです。
安西:たぶん、「世濁声」と「GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」を読んでイコールだという感覚の人は少ないと思います。舞台を最後まで観ていただいてから何かを感じていただけるかと。

― この公演の一番の注目ポイントは何ですか?

鈴木:いつかの時代に、今この地点を見たときに今しかやれない物語ですし、今必要な物語を今この瞬間に安西慎太郎とやれてよかったです。今回の脚本は僕が書きましたが、彼がその言葉を立体化していく・・・、この時代にこの言葉たちを投げるところを一番観てほしいです。おこがましいですが、自分たちの濁った声で「濁世に、今の世の中に対して、(今を生きる人の)ためになると思っています。エンタメとしてもそうですが、もう全てのことにデッドラインに来ているんじゃないかと感じているので、これくらい直接的な作品を皆さんに届けたいと考えました。

なぜ小木と悟の2人がここにいるのかということまで思いを馳せていくと、どうして生きるのか、ちゃんと生きなきゃいけないんだけど、やっぱりちゃんと生きるってめちゃくちゃ難しいから、とにかく必死に生きようということに肩を叩きつつも、その後にギュッと抱きしめたいという意図もある。これを僕らがやる必要があるのか・・・と考えることもありますが、僕らはどんな針が飛んできても受けるし、これを観てもらって一緒に考えていこうよということが伝わればいいかなと思っています。

安西:勝吾さんの仰る通りなんですが、もちろん皆さんに届けるのは俳優の鈴木勝吾と安西慎太郎ですが、やはり僕らも一人の人間なので、人が人に覚悟を持って死ぬ気で届けようとしていることは本物なんです。

鈴木:だから、究極を言うと、全員でこの話をできればいいことではあるんだけどね。たまたま僕らが俳優だったので、作品として落とし込んだだけ。作品を通して観客の皆さんと「実はこういうことについて話したいんだよ」ということから作品を立ち上げ、そういう演劇界であってほしいというアンチテーゼでもあるんです。自分たちの理想とするもの作りを自分たちでやるほかにないんだと思ったのです。

饗宴「世濁声」/Astage-41

― 上演後のトークショーも面白いことになりそうですね。

安西:作品についてのトークでもいいし、何でもいいと思っているんです。その時の空気感で話ができれば。

― 上演後ですから、お客様の反応を直後に聞くことができて楽しみですね。

鈴木:怖いです・・・。反応にビビッてます(笑)。
安西:僕は何の不安もないですよ。
鈴木:俺はちょっと安西慎太郎という俳優におののいています、今。安西さんの芝居から色々なことが見えてきて。そういう意味での悦びもあるんだなと感じています。
安西:不安はないと言いましたが、厳密に言うとあることはあるんです。でも、僕もこの企画を成功させたいと思っていますが、作品というものはどこまでいっても完全にはならないと思っていて、毎回毎回見せるものが本物であり本当であるので、そういうことを含めて皆さんに受けとってほしいんです。

饗宴「世濁声」/Astage-42

― “完全なもの”って何なんでしょう。

鈴木:物語の冒頭で言っている“誠実”と“不誠実”の話と近いかもしれません。完全なものになった瞬間に不完全になる。なので、僕は不完全のほうがいいとも思っています。誰かにとって完全なものであっても、他から見たら不完全のものになる。不完全な状態がすべてにおいて完全になる可能性を秘めているという意味で“完全なもの”なんじゃないかと。演劇を観るときに“完璧な日に観たい”という考え方もあると思いますが、そう思うことがむしろ自分をつまらなくしてしまう作業になってしまうような気がします。今日観たものが一番いいわけなので。

安西:よく見えるんだろうなという技術や手法はあるんです。でも、我々が今この世界で生きているように、役も生きていて、作品も生きている。全てが生き物。俳優はそこで生きる存在にしないといけないということを考えると、完全でいてはいけないと思いますね。

― なるほど、深いですね・・・。

鈴木:安西慎太郎が、今回取材を受けさせていただいているうちに、日に日に喋れるようになってきてるんです(笑)。
安西:そうなんです。最初のころは9割5分くらい勝吾さんが喋ってましたから。僕は必要なところだけ話していました。でも、回を重ねるごとに勝吾さんの気持ちを聴きながら僕もいっぱい(頭の中に)文字が出てきてまとまってきました(笑)。

― そうなんですね。いいときにインタビューさせていただいてありがとうございます(笑)。それでは、本作への思いをもう一度最後にお聞かせください。

鈴木:優しさということを間違えないでいてほしいと思っています。指でハートを作って「好きだよ」と言ってくれたものだけが愛とするのではなく、本当の愛情や本当の優しさはそんなものじゃない。この作品を観て色々思うことや感じることがあるとは思いますが、僕は最大の優しさを持って慎太郎とこの作品を皆さんに向けて作っているので、今一度、“優しさ”について考えていただけたら嬉しいです。

安西:作品を届けているのは(上演の)その瞬間ですが、今回作った僕たちもそうですし、キャスト、スタッフ、そして観客の皆さんにとっても、それぞれの未来や次に繋がるものになればいいなと思います。僕らも本当に愛情を込めて作ってきた作品なので、それを体感していただいて、皆さまの記憶に残る何かになれば嬉しいです。

【鈴木勝吾/Shogo Suzuki】
1989年2月4日生まれ。神奈川県出身。09年、「侍戦隊シンケンジャー」のシンケングリーン/谷千明役として俳優デビュー。以降、ドラマ・映画・舞台などで活躍。主な出演作に、ミュージカル「薄桜鬼」シリーズ(毛利亘宏/西田大輔演出)、ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』(小林香演出)、ミュージカル『憂国のモリアーティ』シリーズ(西森英行演出)、S-IST Stage『ひりひりとひとり』・『鋼の錬金術師』(石丸さち子演出)などがある。2024年は少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演 「テンペスト」に出演。
【X】https://twitter.com/Shogo_Suzuki_
【Instagram】https://www.instagram.com/shogo_suzuki_official/
【ファンサイト『FAMILIA~陽のあたる場所』】https://fanicon.net/fancommunities/3634

【安西慎太郎/Sintaro Anzai】
1993年12月16日生まれ、神奈川県出身。
今年の誕生日当日にDisGOONieSにてバースデーイベントを開催予定。
【OFFICIAL SITE】https://shintarou-anzai.bitfan.id/

撮影:ナカムラヨシノーブ

「世濁声」ビジュアル

饗宴『世濁声』
<Introdaction>
「人ならざるものは僕なのか。世界なのか」
転がる真実に人は眠り。世界もまた沈黙で答えている。
それでも僕らは信じよう。世界はまだこんなにも美しいと。
これは一つの希望が目覚める物語。
「君が思う、そして僕が思う。
だからこそ君は君だし、僕は僕でいられるんだ。」
「人の記憶を思うんだ。それがいつか心になる」
記憶を持たぬ男。全てを知る男。
いつかの時、どこかの場所で二人で織りなす、
真実の為の与太話。
これは今こそあなたの未来へ届けたい言葉の群像でもある。

公演日:2023年11月9日(木)~11月19日(日) ※11月14日(火)休演
会場:RESTAURANT BAR DisGOONieS
(〒104-0061 東京都中央区銀座3-3-1 ZOE銀座B1)
出演:鈴木勝吾/安西慎太郎
作・演出:鈴木勝吾/安西慎太郎
各回ゲスト:矢崎広、小松準弥、本田礼生、林田航平、山口大地、宮崎秋人、松田凌、君沢ユウキ、長友光弘(響)、井澤勇貴、村田洋二郎
音楽:ただすけ
主催:DisGOONieS 企画・制作:DisGOONie

【料金】
全席指定¥13,000(お食事+ワンドリンク付)
※11月19日(日)13時~の回は「プレミアム打ち上げトークショー」
¥16,000(お食事+ワンドリンク付)

【饗宴「世濁声」公式サイト】
https://disgoonies.jp/show.html?code=0000064

【饗宴「世濁声」公式グッズ】(11月30日まで受付中)
http://disgoonie.shop-pro.jp/?mode=cate&csid=0&cbid=2891756

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饗宴「世濁声」/Astage-63